付加価値型ホテル その2
2018/08/16
大阪へ行ってきました。
フードホールやショップなど、最近出来上がった多くのプロジェクトをまとめて視察してきました。
ですが、今日は、ホテルの話をしましょう。
15分だけください。
今回宿泊したホテルは、「ホテル・アンドルームス大阪本町」。
2018年6月号「1冊まるごと ホテル特集」で掲載しているホテルです。
ちなみに、この号が、お陰さまで大変好評をいただいておりまして、在庫が少なくなってきました。書店に在庫がないかもしれません。申し訳ありません。こちらには、あと少しございます。
以前のブログで、〈ホテルの「付加価値」戦略〉というタイトルで書きました。
http://www.shotenkenchiku.com/blog/entry-813.html
今日は、その続編という感じで、「アンドルームス大阪本町」を紹介しましょう。
「アンドルームス」は、〈一泊のストーリーを充実させる「&」があるホテル〉をコンセプトにしています。運営するのは、ソラーレ ホテルズ アンド リゾーツ。同じく18年6月号で掲載したホテル「ハタゴイン静岡吉田インター」も、ソラーレ ホテルズ アンド リゾーツによる運営で、1階にはブックカフェを併設しています。
「アンドルームス大阪本町」は、「アンドルームス」ブランドの1号店です。
全体的にカジュアルでシンプルなつくりですが、付加価値を客に感じさせる仕掛けが用意されています。
それは、1階のゆったりした空間。その空間では、ロビーラウンジとカジュアルレストランが一体的な空間としてデザインされています。
開閉可能なガラスパーティションで仕切られてはいますが、開け放たれているので、ロビーとレストランに一体感があります。スタッフが使うカウンターも、ホテル側からレストラン側まで連続しているので、ホテルスタッフがレストランの運営もまかなえる機能的なプランニングです。
何よりも、両方の空間が同じでトーンでデザインされているため、一体感と連続感が出ています。
では、こういうゆったりした共用ラウンジがあると、どんなことが良いのか。
それは、客が豊かな気持ちになれる、ということです。
つまり、宿泊体験の満足度が上がる。
館内は、大きい客室では22平米ほどあり少し余裕がありますが、「スタンダードダブル」の客室は14〜17平米なので、かなりコンパクトです。
けれど、ロビーラウンジは、チェックインとチェックアウト時、つまり、そのホテルで最初と最後に過ごす空間なので、印象に残るんですよね。
さらに、そのロビーラウンジが、宿泊客だけでなく、地元の人も気軽に使っているような空間だと、宿泊客としても、「この街の日常を体感している」という充実度を感じられて、その宿泊体験がより豊かになるんですね。
このホテルの魅力も、カフェダイニングの部分を、いかに宿泊客以外の人たちにオールデイダイニングとして日常的に利用してもらうかという点にかかっていると感じました。街場のダイニングとして機能する飲食店としてのクオリティーを備え、時にはイベントも開催したりしてみる、そんなふうに生き生きとこの1階が運営されていると、このホテル全体がとても魅力的になるはずです。
そんなわけで、ここ数年は、広いパブリックラウンによってホテルの居心地や満足度を高める。それが、ホテル開発におけるメインストリームになっています。
大事なのは、自由でフレキシブルな余白をつくると同時に、その空間をいかに使っていくかです。企画や”人”が重要になりますね。
では、そういうホテルは、具体的に言うと、どんな姿をしているでしょうか。
同じ6月号で掲載した以下のホテルをご覧ください。そこに大きなヒントがあります。
●MOXY 東京錦糸町
●MOXY 大阪本町
●The Millennials Shibuya
●KUMU 金沢 -THE SHARE HOTELS KUMU
なお、この「アンドルームス」シリーズは、各地に増えていきます。
2軒目は、今年6月にオープンした「ホテル・アンドルームス名古屋栄」。3軒目の「新大阪」は、今年10月1日に開業予定です。
「名古屋栄」では、男女別の露天風呂付き大浴場とカフェが併設されています。「新大阪」では、ホテルが直営する「そば屋」と、銭湯風大浴場が併設される予定です。これらが、「&」の部分、つまり付加価値ですね。
個人的には、大浴場が大好きなので、これは大きな付加価値ですね。
誰が設計したのかも押さえておきましょう。
「大阪本町」は、設計ディレクションをUDSが、設計を、たしろまさふみデザインルームが手掛けています。
「名古屋栄」と「新大阪」は、有限会社橋本夕紀夫デザインスタジオによるデザインです。
「アンドルームス」の話を前振りにして、ホテルに関する話をしようと思っていたのですが、前振りがずいぶん長くなってしまいました。。。
「アンドルームス 大阪本町」を含めて、多数のホテルを掲載した2018年6月号は、「1冊まるごとホテル特集」です。
では、なぜ「1冊まるごと」にしたのか。
その理由を簡単に説明しますね。
こんな話って、ブログでしか書けないですから。笑
実は、編集部側の視点で言うと、「1冊まるごと ○○特集」を企画するのって、けっこう勇気が要るんですよね。
例えば、「1冊まるごと ホテル特集」にすると、ホテルのプロジェクトに携わっていない読者の方々が、まったく買ってくれない可能性もある。そのため、複数の特集を1冊に詰め込んで、より多くの読者の方々に興味を持ってもらえるきっかけを持たせるように構成します。「月刊 商店建築」で言えば、3、4個の特集で1号を構成するわけです。
ところが、です。
ホテルに関しては、いま、勢いがスゴイんです。
毎日のように、ホテル開業のお知らせが編集部に飛び込んできます。
設計者の方々と会っても、「いま、ホテルの設計をしている」という話を頻繁に聞きます。
先日、大阪で会ったデザイナーさんも、今までは飲食店を中心にデザインしてきたのですが、「いま、来年オープン予定のホテルを4つ設計中だよ」と話してくれました。
読者の方々から「ホテルの特集号、ないですか」と聞かれることも増えてきました。
そんなわけで、これほど大きな盛り上がりを見せているのなら、思い切って「1冊まるごとホテル特集」にしたら、読者の皆さんに「これは、事務所に保存しおかなくちゃ」と思っていただける資料になるのではないかと考え、「1冊まるごと」に挑戦してみました。
その結果、6月号が異例のヒットとなっておりまして、在庫僅少となりつつあり、品切れになる可能性も出てきまして、むしろ読者の皆さんにご迷惑をおかけしてしまわないか心配しているほどです。。。
「商店建築」の誌面では、出来上がった空間の写真をお見せするだけでなく、「なぜ」と「どうやって」も重視しています。
この6月号ホテル特集で言うと、「なぜ」に関しては、トラベルジャーナリストの寺田直子さんに、「なぜライフスタイルホテルが、大きな時代の流れになっているのか」という解説コラムを寄稿いただきました。
「どうやって」に関しては、「[図面集]1:50 の図面で見る ホテル客室プラン研究」という資料を掲載しました。これは、設計が難しい比較的コンパクトな客室について、同じ縮尺で詳細図面を集めた記事です。
こんな具合に、誌面では、「なぜ」と「どうやって」を大切にしながら取材をしています。
日本全国でホテル開発の勢いが止まらない今、ホテルづくりに携わる皆さんのお役に立てていただけたら何よりです。〈塩田〉
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日本で唯一、店舗デザインの最新事例とセオリーが学べる月刊誌「月刊 商店建築」。
「1冊まるごとホテル大特集」は、2018年6月号。
こちらでも、目次のチェックやご購入ができます。
最新号は2018年8月号。
こちらでも、目次のチェックやご購入ができます。
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