ついに8月に入り、夏真っ盛り。日差しが少々きついですが、清々しい空気ですね。

ところで、最近「本のあるお店」に行ったのがいつか、覚えていますでしょうか。
それはいわゆる「本屋」とは限らないかもしれませんね。

一杯のコーヒーを飲みに入ったカフェで座った席の横、
ショッピングに訪れた洋服屋に並んだシャツの隣、
キッチン用品を求めて入った雑貨屋の棚……
思い出してみると、意識はしていなくとも、
本が置かれた場所で過ごした時間は多いのではないでしょうか。

書店は、もはや本を売るだけの空間ではありません。

商店建築8月号の特集は「人を呼び込む“滞在型”複合書店」。
国内外の大型、複合型書店の空間デザインから、
これからの本のある空間のつくり方のヒントを見つけてください。

全国の書店数は減少しつつありますが、
床面積300坪以上の大型書店は増加傾向にあるそうです。

それは、書店がさまざまな業態と複合することで、
よりおおらかな「居場所」をつくることが模索されているからです。

特集「人を呼び込む“滞在型”複合書店」では、
次のような4件のブックセンター、複合ショップ、図書館を取り上げています。

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衣食住全てを包括したシームレスや複合書店
「OPEN HOUSE」
設計/クライン ダイサム アーキテクツ

棚田状のスキップフロアが連なる公園のような複合書店
「Think Space B2S」
設計/クライン ダイサム アーキテクツ

小さな街のような、店とモノの集合体
「HIBIYA CENTRAL MARKET」
設計/スモールクローン

本と関わるきっかけを生み出す曲線形の書棚
「菊池市中央図書館」
設計/乃村工藝社
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「OPEN HOUSE」と「Think Space B2S」は、いずれも
タイ・バンコクの商業施設内に入る巨大ブックセンターです。
「OPEN HOUSE」の床面積は、4600㎡、「Think Space B2S」は3000㎡。

広大な規模の中で、いかにヒューマンスケールでリラックスできる「居場所」をつくるのか。
どちらも、ゾーニングにより小さなエリアを散策するようなおおらかな空間が広がっています。


設計を手掛けたクライン ダイサム アーキテクツへのインタビューも行いました。
2011年に開業した「代官山T-SITE」以降、いくつもの複合書店のデザインに携わっている
彼らに聞いたテーマは「自分の価値が高まるような『書店』体験」です。


横浜の老舗書店有隣堂が「東京ミッドタウン日比谷」にオープンしたのが「HIBIYA CENTRAL MARKET」。
クリエイティブディレクターにアルファの南貴之さん、
空間デザインにスモールクローンの佐々木一也さんが参加し、
「新しい書店」ではなく「今までにない店」をつくることを掲げて進めたそうです。

そうして実現したのが「マーケット」のような複合ショップ。
眼鏡屋や床屋、キオスクのようなスタンドコーナー、
日々商品も什器も入れ替わるショップスペース、
ちょうちんがぶら下がる居酒屋や屋台が、
路地を行く度に現れる体験は、商業施設の中ながら、街の中を歩いているようです。


有隣堂の松信専務、南さん、佐々木さんへのインタビューでは
その狙いとなぜこの空間が実現したのか? について迫っています。


「菊池市中央図書館」は、熊本県菊池市の公立図書館です。
空間デザインの特徴は、市の象徴として親しまれる菊池渓谷をモチーフにした全長100mの本棚。
川の流れのように曲線を描きながら、ベンチ、カウンター、壁などその姿を変えていきます。
シンプルなアイデアながら、本と人との距離が綿密に設計され、
子供も大人も楽しめるおおらかで居心地の良い空間を実現しています。


豊富な図面とスケッチを載せていますので、そこからゾーニングとデザインの妙を感じてくださいね。

インタビューの中でクライン ダイサム アーキテクツのマーク・ダイサム氏は、
「本屋というのは時間と一体になっている特殊な場所」と言います。
実店舗に求められる役割がものを売る場所から時間を過ごす場所へと
シフトしている今、「書店」や「本」の本質を考えてみることで、
これからの時代の店の姿が浮かび上がってくるかもしれません。
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商店建築2018年8月号
業種特集1/進化し大型化するフードホール
業種特集2/ハイエンドカフェ&カジュアルダイニング
特別企画1/デザイン意図が伝わる、プレゼンテーション&コミュニケーション術
特別企画2/人を呼び込む“滞在型”複合書店
表紙:ブヴェット

2018年7月27日発売
¥2,100



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