原宿にある「フリーペドラーマーケット」のカフェスペース。自家焙煎したオリジナルコーヒーをデッキで味わうと、気分は最高です

こんにちは。
毎月ご愛読ありがとうございます。

今月も、最新号の目玉記事を15分で拾い読み。「立ち読みして中身を吟味している時間すらない!」という多忙なあなたに代わって、拾い読みをしてみます。お時間ある方は、ぜひ書店へ。
 
 

 
9月号の目玉特集の一つが、これ。

 特集 LIFESTYLE STORES
    ~ライフスタイル提案型ストアの業態戦略と空間デザイン 



毎月、取材や視察で多くの商業空間を訪れる中で、ここ1、2年、気になっていたことがありました。「ライフスタイル提案型ストア」と言える店が全国に増加しているということです。
9月号(69ページ)では、そのブランディング手法と設計手法にフォーカスしました。
あなたの生活エリアにも、こうしたお店があるのではないでしょうか。
今回誌面でご紹介するのは、厳選した以下の5店です。
 
フリーマンズ スポーティング クラブ 東京(表参道)
ガーデンハウス(鎌倉)
トミー バハマ 銀座店(銀座)
フリーペドラーマーケット/ザ・デック・コーヒー & パイ(原宿)
バードハウス南青山(青山)


銀座の「トミーバハマ 銀座店」。アパレルショップとして知られるブランドですが、なんと街路に面してバーカウンター


鎌倉の人気スポット「ガーデンハウス」。グリーンの置き方に注目してみてください

 
掲載した5軒のみならず、ここ1、2年、ライフスタイルを提案するような注目の店舗が増えています。例えば、以下など。

ロンハーマン 千駄ヶ谷店(11年10月号、設計/So,u)
1LDK apartments.(12年10月号、設計/レアジェム)
トゥデイズスペシャル 自由が丘(13年2月号、設計/スキーマ建築設計)
デスペラード(13年6月号、設計/設計事務所イマ)
アコメヤ東京(設計/モーメント)




青山の「バードハウス」。珍しい置物は、IT機器に囲まれた私たちの生活に温かみを添えてくれます




では、ライフスタイル提案型ストアとは、何でしょう。
以前から、ファッションブランドがインテリア分野に進出したり、アパレルブランドがブティックにカフェを併設する動きが活発化していました。
しかし、ここでライフスタイル提案型ストアと呼ぶ店は、次のような特徴を持っています。
 
・複合したプログラム(「カフェ+雑貨店」など)が、それぞれに主従の関係でなく、等価である。つまり、カフェと雑貨店の、どちらがどちらに付帯しているのか判別しがたい。
・売られている商品が、ジャンルによってではなく、世界観やコンセプトによってセレクトされている。例えば、誌面に登場する「バードハウス」では、洋服、文具、雑誌、植物、フレグランス、アクセサリーなどジャンルを超えた幅広い商品を扱っていますが、すべては、「ノマドワーカーのために」というコンセプトで選ばれています。
 
だいたいそんなイメージです。
言葉で書くとややこしいのですが、誌面で写真をご覧いただければ、一目瞭然です。
なお、これらライフスタイル提案型ストアの思想的背景に、アメリカの「キンフォーク」という雑誌の存在があります。今回の取材でも、幾つかの店舗に置かれており、「キンフォーク」の世界観に大変共感するという店舗オーナーもいました。


フリーペドラーマーケット。店内は、空間、什器、商品が混然一体となって明確な世界観を醸し出す


バードハウスのディレクター、川崎勝元さん。多様な商品は、実は、ある一つのコンセプトに貫かれています。詳しくは本誌インタビューで


バードハウスの空間を設計した建築家の玉上貴人さん。シンプルな仕掛けなのに複雑に見える店内。その仕掛けが一目瞭然になる図を誌面に載せました

 
 
 
なぜライフスタイル提案型の店舗が増えているのでしょうか。
いくつも理由が考えられます。
例えば、長引く物販店の売れ行き不振。店舗経営者は、いかに間口を広げて、多くの客を店に誘引するかにしのぎを削っています。
更に、商品に関する情報とや商品の種類が増えたこと。つまり、ショップが目利きとしての機能を求められているわけです。
詳しくは、記事「なぜ今、ライフスタイル提案型ストアなのか」(9月号 P.98)にて。
このあたりの背景を無視して、形だけのライフスタイル提案型ストアをつくろうとすると、おそらく計画は迷走します。
 


ガーデンハウスのランチメニュー。サラダプレートやカレーが大変美味しいです

 
 
では、ライフスタイル提案型ストアは、どのように設計すればよいでしょうか。
空間デザインを導くキーワードとしては、「アメリカ西海岸」「ロサンゼルス」「ビーチカルチャー」「木を多用した素材感のあるナチュラルな内装」「グリーン」「雑誌 KINFOLK」「エコロジー」などが浮かび上がってきました。
ただし、露骨な「西海岸」テイストではありません。むしろ、重要なのは、「ゆるさ」「リラックス」といった西海岸のムード。
そのあたりの意匠の導き方も、誌面の写真とインタビュー原稿をじっくり突き合わせて見ていただくと、浮かび上がってくるはずです。どんなコンセプトやモチーフが、ライフスタイルストアの雰囲気を形づくっているのか。


青山の「フリーマンズスポーティングクラブ」。3階のバーバーも地下のバーレストランも必見です。本国アメリカの創業者の妥協のない徹底したチェックを経て、空間が出来上がりました


ガーデンハウスに置かれた観葉植物。重要なアイテムです


バードハウスで商品として陳列されている雑誌「KINFOLK」。賛成するにせよしないにせよ、ひとまずこの雑誌の世界観を把握しておかないと、設計者の皆さんはクライアントと打ち合わせができないかもしれません

 
 
「トミーバハマ銀座店」(P.82)を設計した北村喜裕さん(乃村工藝社)は、西海岸をリサーチした上で、「大らかさ」を重視して空間デザインをしました。
「フリーペドラーマーケット」(P.88)のカフェ部分をプロデュースしデザインした杉浦幸さん(CPセンター)は、オーナーが海外で入手した特徴的な什器から空間デザインを考えていきました。
「ガーデンハウス」(P.77)の設計を手掛けた高橋紀人さん(ジャモアソシエイツ)は、設計のコツとして、意匠性を抑えることを挙げます。これは、大きなヒントになります。改めて、この特集に登場した5店舗の写真をよく見返してください。重要なのは、素材感です。どの空間も、「ニューヨーク風」「西海岸風」といった具体性や、強い意匠性を極力抑えつつ、素材感には最大限の気遣いをしています。86ページに掲載した北村さんの西海岸リサーチやイメージボードなどを見ると、そのことがはっきり分かります。


トミーバハマ銀座店を設計した北村喜裕さん(撮影/土田有里子)


フリーペドラーマーケットのカフェ部分をプロデュースしデザインした杉浦幸さん(右、撮影/土田有里子)


トミーバハマの店内。この樽のオブジェには、重要なストーリー性が宿っています

今後、ライフスタイル提案型ストアは、ますます増加するでしょう。
今週も、横浜や吉祥寺にオープンした新しい複合商業施設へ視察に行ってきましたが、あちこちにライフスタイル提案型ストアが入っています。
京都にも、大変興味深いライフスタイル提案型の複合店舗ができましたので、近いうちに、何らかの特集で突っ込んだ取材をする予定です。お楽しみに。
 
最後に一つ。
これから増加するライフスタイル提案型ストアの成功のポイントは、おそくら、オーナー(またはディレクター)の個性です。これまでも重要でしたが、ますます重要になりそうです。
 


バードハウス店内。ロフトと中庭という空間イメージです。傾斜した壁面が空間に広がりを与えています。カジュアルな素材感にも注目です


ガーデンハウスの植裁ショップ。売り場がディスプレイとしても成立しています

 
 
そんなわけで、当然、設計者の皆さんにも、ライフスタイル提案型ストアの設計依頼が増えるでしょう。あるいは、もう設計依頼が来はじめている人も少なくないでしょう。
ライフスタイルストアには、ゆったりした空間が漂っていますが、店舗展開においては、今、猛スピードで進化しています。乗り遅れている場合ではありません。私たちも、取材をしつつ、このトレンドの加速ぶりに驚きました。業態開発と空間演出のポイントだけは、あなたも今のうちに押さえておいてください。
 
   
ライフスタイルストアの業態開発と空間演出の手法を紹介した「月刊 商店建築」9月号。
おかげ様でご好評いただいており、もし書店で在庫切れの場合は、弊社ウェブサイトでも目次や掲載物件の概要をチェックしていただけます。ご活用ください。〈玉木、塩田〉


植物のアレンジや販売を手掛けている事務所「ソルソ」。今回の取材の各所で、ソルソの名前が挙がりました。ガーデンハウスやトミーバハマ銀座店の植裁メンテナンスもソルソが手掛けています

 
 
盛りだくさんの9月号、ぜひ手に取ってご覧ください!
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商店建築9月号
新作/カンペール ニューヨーク マークイズみなとみらい
特集/「ライフスタイルストア研究」
業種特集/カジュアルレストラン
マテリアル特集/透明素材

2013年7月29日発売
2,040円(税込)



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