春が待ち遠しい今日この頃、いかがお過ごしでしょうか。
本日のブログは、発売中の商店建築3月号の特集「空間とモノで魅せるクラフトショップ&ギャラリー」についてです。

ここ数年、器や道具、生活雑貨を中心にしたお店が人気を集めています。
今回の「クラフトショップ&ギャラリー」特集で取り上げたのは、日用品としてのみならず、
オブジェのように工芸品や雑貨を扱い、モノ自体が空間の構成要素として存在するスペース。
オーナーやディレクター独自の美意識が行き届いた、強度を持つ空間を集めました。



特集の扉写真に採用した「/ MAISON」は、大阪を拠点とするインテリアデザイナー柳原照弘さんのオフィス、ショップ、ギャラリーです。
大阪・船場の元銀行の建物を改修したこの空間を初めて訪れた時、
置かれたモノの存在感と余白のつくり方、時を経てきた建物の痕跡とそこに挿入された現代性のバランスに圧倒されました。
海外のデザインとのハブとしての役割も意図したこのスペースは不思議と、
日本の人からは「外国のよう」と、海外から訪れた人には「どこか日本を感じる」と言われることが多いそうです。
空間が、柳原さん自身のスタイルや思想を発信する、何よりのプレゼンテーションになっています。



東京・新木場の「CASICA」は、映像制作会社タノシナルが運営するショップ、カフェ、オフィスの複合スペースです。
天井が高く、広々とした元銘木倉庫の空間を生かし、世界各国の民芸、作家ものの器、古道具などが並びます。
特筆すべきは鈴木善雄さんと引田舞さんのユニット「CIRCUS」が、空間プロデュース、設計、商品バイイング、店舗マネジメントを全て手掛けていること。
インタビューでは、ユニークなプロジェクトが生まれた背景と、プロセスについて、聞きました。


「NOTA_SHOP」は、陶芸の町として知られる滋賀・信楽の山と田に囲まれた土地に建ちます。
元製陶所の建物を改装し、デザインスタジオ「NOTA&design」を主宰する加藤駿介さんと佳世子さん夫妻が運営するショップで、隣はアトリエ。
設計を手掛けたabout佛願忠洋さんと共に、4年をかけてつくりあげた空間です。
以前、「郊外や地方のお店に可能性があると思っている」と話してくれた、佛願さん。
その規模、時間や手間のかけ方は、確かに地方の立地だからこそ実現可能であり、
地域の人をつなぎ、外から訪れる人の目的地となっています。

埼玉の住宅地に建つ“古物の時間を取り入れた”住宅併用店舗「takase」(設計/サトウカツヤ設計室)。

東京・南麻布のビルに入る“世界中からの蒐集品が空間の表情をつくり出す”「PLAGUE&CO.」(デザインディレクション/PLAGUE & CO. 設計施工/ALL VINTAGE)。

京都・寺町通りに移転リニューアルした“アーチの奥に連続する鑑賞空間”「京都やまほん」(設計/やまほん設計室)。

特集内の6件はいずれも、モノと空間がつくり出す独自の時間が流れるスペースです。
また、こうしたクラフトショップ/ギャラリーを多角的に分析するコラムも充実させました。



デザインジャーナリスト土田貴宏さんによる寄稿「根源的な美をいかにつくりうるか」では、
世界的な潮流である仕事や自然素材を取り入れたデザインと、現在の日本のクラフトムーブメントについて考察します。

工芸やカルチャーに精通するエディターの井出幸亮さんの寄稿「“ギャラリー化”するショップ空間」では、
「暮らし系ライフスタイル」の進化系としての延長線上に、クラフトショップを位置づけ、そのルーツや派生について分析しています。

取材を通して感じたのは、これらのショップがモノを売る場所である以前に、一つの表現であるということ。
空間が、オーナーや企業、クリエイターの思想や姿勢を伝え、共感する人を集めるある種の「メディア」として機能しています。

ぜひ商店建築3月号をお手にとって、ご覧ください。

〈玉木〉
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商店建築2018年3月号
ハイアット セントリック 銀座 東京
特集/ビールが旨い空間デザイン
業種特集1/器と工芸品の店
特集 空間とモノで魅せるクラフトショップ&ギャラリー
業種特集2/フードショップ
表紙:ハイアット セントリック 銀座 東京

2018年02月28日発売
¥2,100



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