月刊商店建築2013年3月号の記事 〈オフィスデザインの成否を決める! 「リサーチ&提案」術〉。上に並んでいる図は、オフィス環境のコンサルティングを手掛けるドウマが使用している調査シート

こんにちは。
いつもご愛読、ありがとうございます。
本日は、最新号「月刊 商店建築 2013年3月号」の注目ページを拾い読みしてみましょう。
「立ち読みで中身を吟味している時間すらない!」という多忙なあなたにお送り致します。お時間ある方は、ぜひ書店へ。 

  
  
さて、突然ですが、オフィス空間の設計を手掛けたことがありますか。
あるいは、オフィス空間の設計を手掛けてみたいと思いますか。
  
3月号の取材で、オフィスの設計依頼を多く受注する設計者の方々に、どんなふうに仕事をしているのか聞いてみました。皆さんが異口同音に語ったキーワードが二つあります。
「コンサルティング」と「ワンストップ」です。
 
詳しくは、「月刊 商店建築」3月号のレポート記事(P.187)にまとめました。
オフィスの設計を多数手掛ける設計事務所3社に取材。
タイトルは、〈オフィスデザインの成否を決める! 「リサーチ&提案」術〉です。

 
 
では、コンサルティングとは一般的にどんな作業でしょうか。
おおまかに以下の4ステップに分けられるかと思います。

1:現状の調査・分析(オフィスデザインのプロジェクトであれば、現在のオフィスでどのように働いているか)
2:問題点の洗い出し
3:向かうべき方向性の策定
4:解決策の立案

オフィスの設計において、具体的な空間デザイン(基本設計や実施設計)をするのは、「4:解決策の立案」の段階に相当します。
では、1~3のステップは、ワークプレイスの診断を専門とするコンサルタントに依頼すればよいのでしょうか。もちろんそういう方法もありますが、それではコストや時間の負担が増えてしまいかねません。
そこで、1~3のステップも、空間の設計者が手掛ける必要があるわけです。しかも、1~3のステップ次第で、「4:解決策の立案」(つまりオフィス空間の設計)の段階での成果物のクオリティーが大きく変わってくると言われます。


オフィスの設計を専門に手掛けるmidasと、ワークプレイスのコンサルティングを専門とするDOUMAは、協働しながらオフィスの設計を進めていく


DOUMAのリサーチでは、クライアントの企業の社員に画面上で入力できる調査を実施し、現状の働き方や満足度を調査し分析する

例えば、オフィスの設計を専門に手掛ける事務所ミダスは、ワークプレイスコンサルティングを専門とする別会社ドウマと協働してオフィスの設計を進めます(P.187)。
まず、プロジェクトの初期段階では6週間かけて徹底的にリサーチをします。クライアントの社員にも全員参加してもらい、現在の働き方に関する行動調査や満足度調査を実施します。「ビジョンセッション」と名付けたブレインストーミングも行います。そしてその結果を分析します。
すると興味深いことに、その調査の結果レポートが出来上がる段階で、既にゾーニングに近いものが産出されます。(p.189上の図版参照)
この調査内容について、誌面で公開してもらいました。
 
 


ILYAでプロジェクトマネジメントを手掛ける山本勝也さん(左)と、設計を手掛ける沖野俊則さん


ILYAではこうしたプロジェクトの作業フローと、各段階での提出物をクライアントに初期段階で説明する

大規模なオフィスの設計を多数手掛けるデザイン事務所イリアも、やはりコンサルティング段階を重視し、そこにエネルギーを注ぎます。彼らは、そのコンサルティング作業を「プログラミング」と呼び、与件や課題の整理を行うプログラミング専門チームも組織しています(P.190)。
そして、プログラミングの結果や、そこから導き出された新しい働き方の提案をクライアントに伝えるわけですが、ここで重要なのが「伝え方」です。いかに分かりやすくクライアントに伝えられるか。
クライアント側でオフィス移転のプロジェクトを担当しているのは、たいてい総務部の方々です。設計者は彼らにプレゼンテーションします。ところが、当然ながら総務部の方々は、空間デザインの分野に親しんでいるわけではないので、イメージが沸く分かりやすいプレゼンテーションをする必要があります。それを怠ってしまうと、「こんなはずではなかった」と言われてしまうなどのトラブルを招きかねません。
そこで、イリアの沖野俊則さんのチームによるプレゼンテーション資料は、参考になります(P.191の写真)。空間デザインのテイストをマトリックス状にまとめたり、新しいオフィス空間での過ごし方をイラストで伝えるなど、随所に工夫が盛り込まれています。


この道23年のオフィスラボの渡辺晃一郎さんは、B工事の振り分け方の重要性を説く


オフィスラボでは、プロジェクト初期に体制表をクライアントと共有する。それによって、その後の作業が円滑に進むという

さて、こうしたリサーチやプレゼンテーションと並行して、設計前にクライアントとしっかり打ち合わせておかねばならないのが、やはりお金の話。取材した3社が異口同音に強調したのが、いわゆる「B工事」の振り分け方。その作業次第で、オフィス移転のコストに大きな差が出ると言います。それについて、オフィス移転プロジェクトを手掛けて23年の渡辺晃一郎さん(オフィスラボ 営業統括部長)が分かりやすく説明してくれました(P.191)。

また、プロジェクト途中でのトラブルを防ぐためには、初期段階の打ち合わせから「プロジェクト体制表」(P.192の図)を関係者で共有しておくことも重要だそうです。
同じくイリアも、オフィス移転をどのような段取りで進め、各フェーズでどのような資料を提出するかの全体像を、初期段階でクライアントと共有しています(P.191真ん中の図)。
 
この他にも、引越しの段取り、新規購入する備品の調達なども重要な作業です。
つまり、デザイン作業だけでなく、コンサルティングから、お金や体制の管理まで含めたマネジメント業務を1社ですべてやってくれるのか。「ワンストップ」ですべてやってくれるのか。それが、クライアントが設計依頼をする際に、最も気になるポイントの一つなのです。


奥昌子さん率いるデザイン事務所、プラスタックでは、オフィスの設計業務専門のホームページも用意した

ここまで読んでくださった方の中には、こう思う方もいらっしゃるかもしれません。「リサーチやマネジメントがこんなに必要なら、やはり大規模オフィスの設計は組織設計事務所でないと受注しにくいのか・・・」と。
しかし、そうではないんです。
193ページのインタビュー記事をご覧ください。
インテリアデザイナーの奥昌子さん率いるプラスタックは、これまで多くの飲食店、ブティック、ヘアサロンなどを設計してきたアトリエ系デザイン事務所です。そのプラスタックが、ここ1、2年、1000坪を超える大型オフィスの移転プロジェクトを受注しました。その一つがIT関連企業「アイレップ」(P.146)のオフィスです。
なぜ奥さんは、大型オフィスの設計依頼を受けるのか。ご本人に聞きました。
ポイントは、「専用ウェブサイト」「プロジェクトマネジメント業務」「オリジナルデザイン」。
力を入れるべきポイントが分かれば、アトリエ事務所であっても、オフィスの設計業務を受注できるわけです。誌面では、プラスタックが昨年開設した、オフィスの設計業務専用のウェブサイトの話などを含め、具体的に準備しておくべきことを聞きました。




今月も、読者の皆さんにお伝えしたいことが多く、つい長文になってしまいました。読んでくださって、ありがとうございます。
上記のインタビュー記事はもちろんのこと、掲載した22件のオフィス事例も充実しています。
おそらく掲載物件をすべて見ていただくと、いくつかの共通点に気付くのではないでしょうか。
例えば、「オフィスと一見関係のない人々が入れるような機能を持ったオフィス」が目立ちます。

・コーヒースタンドとギャラリーを併設した建築士事務所のオフィス(P.164 スターディ・スタイル一級建築士事務所)
・夜間にレストラン営業する不動産オフィス(P.168 ROY)
・土日に一般の人々に向けて食に関するワークショップを開催する、写真スタジオ&オフィス(P.174 hue plus)
 
これらの試みは、通常は関係者以外が足を踏み入れることのないオフィスという空間に、外部からの風を吹き込んでくれる仕掛けです。近隣の人々にその企業を認知してもらうプロモーション効果もあるでしょう。企業内に何らかの刺激を取り入れることも期待できそうです。
 
その他、掲載事例の中には、ここ数年の傾向として、ノマドワーカー向けの会員制オフィスや、コミュニケーションを促進させる仕掛けを盛り込んだオフィスも掲載されています。


長坂常さん(スキーマ建築計画)の設計による写真スタジオとオフィス「hue plus」。食に関する撮影スタジオだが、週末にはワークショップも開催される、自由度の高い空間

 
 
 
オフィスの設計を受注するコツ、そして、最新オフィス事例22件を紹介した3月号。
もし書店で在庫切れの場合は、弊社ウェブサイトでも目次や掲載物件の概要をチェックできますし、ご購入もできます。
どうぞご活用ください。
〈塩田〉


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是非ご利用ください。
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