6月号の新作特集。JR新宿駅に隣接してオープンした「ニュウマン」の誌面


こんにちは。
毎月ご愛読ありがとうございます。
  
突然ですが、「空間と空間の境界線をどのように消すか」。
これは、近年の店舗づくりにおける最大のテーマです。
あなたが駆使できる「境界線を消すための設計手法」は、どんな手法ですか?
そのテーマに対する鮮やかな解答を、今日は、本誌の誌面とこのブログで具体的に紹介します。
そして、それらの手法を、今あたなが頭に思い浮かべた手法と比べてみてください。


ニュウマンのインテリアデザインは、駅構内からショップへとシームレスにつながっています

改めて。
今日は、最新号、6月号の「新作特集」を例にしながら、「境界線を消す設計手法」について書きます。
http://www.shotenkenchiku.com/mailm/?id=00072
よろしければ、15分ほどお付き合いください。
 
6月号の「新作特集」は、以下3プロジェクトと盛りだくさん。
2016年を代表する必見の号です。
 
 

【新作特集】
東急プラザ銀座 設計/日建設計 インフィクス
ニュウマン 設計/シナト
マリン& ウォーク ヨコハマ 設計/アール・アイ・エー 鹿島建設

  
  
  
今日は、その中の「ニュウマン(NEWoMan)」(P.60)を題材にします。
ニュウマンは、新宿駅新南エリアに開業した商業施設。二つのエリアで構成されています。一つは、新築ビル「ミライナタワー」の1〜6階。もう一つは、「エキナカ、エキソト」と名付けられた、JR新宿駅の改札内外に展開するショップや飲食店です。両者の合計で約100店舗。これらをまとめて、「ニュウマン」と呼びます。


ニュウマンの売り場と共用通路。その境界線があえて曖昧にデザインされている


駅構内の売り場の環境デザインも大野力さんが手掛けた

ニュウマンの共用空間の設計を手掛けたのは、建築家の大野力さん(sinato)。インテリアデザインだけでなく、広場のランドスケープデザインや改札内外のコンコースの空間デザインまで担当するという、珍しいプロジェクトとなりました。
  
開業前の内覧会で施設を見学した際の印象は、「商業ビルの通路に特有の単調さや退屈さがない」「共用スペースと各テナントとの境界線が意図的に曖昧にデザインされている」ということでした。
そのあたりのことを解明すべく、大野さん、そしてニュウマン施設管理部の方々にインタビューしました。
 


大野さんとニュウマン施設管理部の方々へインタビュー


オリジナルタイルで「情報量の多い」共用スペース

 
 
「境界線を曖昧にすること」は、ここ数年の店舗デザインにおける最大のテーマと言えます。では、どのような方法で、曖昧な境界線をデザインしていくのか。今回大野さんが用いた具体的な設計手法は、大きく分けて以下の三つです。

1:共用部(通路やエスカレーター周りなど)と専有部(ショップ)との境界を意図的にずらす。ポイントは、天井や床の仕上げとリースライン。
2:共用部の情報量を増やす。ポイントは、仕上げ材料とカラーリング。
3:「非場所を場所化する」。ポイントは、小さなデッドスペースを洗い出して、設える。


主にこの三つです。詳細は、誌面をご覧ください。じっくり観察すれば、他の手法も発見できるでしょう。
 
ただし、こうした個々の設計手法を考える上で重要なことが一つあります。記事後半(P.71)をご覧にください。
それは、大野さんがこうした個々の設計手法や意匠を生み出した背景には、一つの大きなテーマがあるということです。そのテーマは、大野さんの言葉で言えば、「他者性を自分達の計画の中に取り込み、どういう秩序をつくっていくか」。キーワードは、「与件」「ルールの使い方とつくり方」「内装管理」「慣習、商習慣」などです。
その根底にある発想を理解すると、表面的な設計手法ではなく、長い射程で設計手法を深化させていくことができるはずです。
 
 


ニュウマンの共用スペース。どこがリースラインか分かるでしょうか。

  
冒頭で、「空間と空間の境界線をどのように消すか」が近年のテーマだと言いました。
特に大型商業施設において、「共用部と専有部(ショップ)の境界を曖昧化する」という空間づくりが大々的に実践され始めたという印象を受けたのは、記憶をたどると、東京では「三越銀座店の増床リニューアル(2010年)」、大阪では「阪急うめだ本店のリニューアル(2012年)」が最初だったように記憶しています。
いまや「共用部と専有部の境界の曖昧化」という方向性は、商業施設づくりにおいて当然のこととなりつつあります。取材や視察で訪れる多くの商業施設で、そのような方向性を感じます。問題は、それをどのような方法で空間として具体化するかという点です。その観点から見た時、今回のニュウマンは、「境界の曖昧化」という大きなデザインの潮流を、第二のステージに進めたのではないかと、取材を通じて感じました。
 


「東急プラザ銀座」のレストランエリア。ここでも「境界の曖昧化」が追求されている


「東急プラザ銀座」のラウンジスペース

「境界の曖昧化」というデザインの方向性では、同じ号に掲載されている「東急プラザ銀座」(P.44)でも濃厚に見ることができます。
 
なお、「東急プラザ銀座」に訪れた際は、6月号の表紙にもなっている空中ラウンジをゆっくり楽しんでみてください。銀座の街並みを見下ろしながら物思いに耽れば、店舗づくりの新しいアイデアが浮かんでくるかもしれません。
 
 
更に、上記のような新宿や銀座のお店へ行くばかりでは街の人混みで疲れてしまうという方々は、もう一つの新作プロジェクト「マリン& ウォーク ヨコハマ」(P.74)へ行ってみましょう。暑くなってくるこれからのシーズンは、こうしたリゾート空間でゆったりショッピングや食事を楽しむのにはぴったりです。特に、テーマ性の強いリーシングと空間デザインの参考例を探している方には、ヒントが見つかると思います。

 


目の前の海を眺めながら散策できる「マリン& ウォーク ヨコハマ」

 
これら新作プロジェクトの他に、6月号には以下の特集も詰め込み、盛りだくさんです。6月号は、2016年を象徴する号になりました。
 
特別企画/「LIGHTING DESIGN 2016」
業種特集1/ファッションストア
業種特集2/クリニック & メディカルスペース

 

本日も、最後までお読みいただき、ありがとうございました。〈塩田〉

 
 
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日本で唯一、店舗デザインの最新事例とセオリーが学べる月刊誌「月刊 商店建築」。
最新号は2016年6月号。
こちらでも、目次のチェックやご購入ができます。
  
  


  
 
【2016年6月号は以下のような方々にオススメです】
●「空間と空間の境界線をどのように消すか」というデザイン的な試みを考えている設計者の方々。
●「敷居が低く入店しやすい店づくりはいかにして可能か」と模索している店舗オーナーの方々。
●「最新の大型商業施設って、どんな方向性なの」と気になっているデザイナーやオーナーの方々。




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