最新増刊号『CREATIVE HOTEL & COMMUNICATION SPACE』


こんにちは。
毎月ご愛読ありがとうございます。

すみません、今日のブログは少々長いです。読むのが面倒かもしれません。
「空間デザインのブレイクスルーはどうしたら可能か」についてご興味のある方だけ、お読みください。


最新増刊号『CREATIVE HOTEL & COMMUNICATION SPACE』

最新の増刊号、『CREATIVE HOTEL & COMMUNICATION SPACE』。
ありがとうございます。おかげ様で絶好調です。
  
正式タイトルは、もう少し長いんです。
ですので、もう一度。

 CREATIVE HOTEL & COMMUNICATION SPACE
 新たなシーンをつくり出すUDSの企画・設計・運営スタイル
 
これが、サブタイトルまで含めた正式タイトルです。
一言で言うと、内容は、UDSという設計事務所のプロジェクト&仕事術を、網羅的に掘り下げた初の特集本。
「企画」「設計・デザイン」「運営」を1社で一貫して行うと、どんなブレイクスルーが可能か。これが、この本の最大のポイントです。


では、「忙しくて、書店で立ち読みする時間もない」というあなたのために、この増刊号の中身をダイジェストでお届けします。
それを通して、上記のポイントに触れていきます。

「時間がなくて、このブログを読む暇もない!」というあなたは、まずは、こちらの目次だけご覧ください。
http://www.shotenkenchiku.com/products/detail.php?product_id=267


では、ダイジェスト版、スタートです。
 
まずは、巻頭の座談会「TRENDS IN HOTEL DESIGN」
テーマは、「今、ホテルをデザインしながら私達が考えていること」。
 
参加してくださったのは、宿泊施設のデザインで新しい在り方を提案し続けている5人のデザイナーです。
サポーズデザインオフィスの谷尻誠さん、吉田愛さん。サポーズデザインオフィスは近年、「ONOMICHI U2」(広島)、「BOOK AND BED TOKYO」(池袋)といったプロジェクトで、新しい宿泊施設の在り方に、企画と設計というポジションからチャレンジしています。
 
次に、Yaz Design Internationalの深津泰彦さん。深津さんは、ホテル設計のプロフェッショナル。個人的な体験で言うと、出張先で宿泊したホテルで「このホテルはリーズナブルな価格ながら機能性や居心地の面で非常によくデザインされている」と感じて、後で調べてみたら深津さんによる設計だったという体験が何度もあります。
 
  
そして、UDSの中原典人さんと藤本信行さん。お二人も、いくつもの宿泊施設のプロジェクトを通して、ホテルやホステルの新しい在り方を次々に提案しています。
そんな5人が、「今、どんな宿泊施設が求められているのか」「それをどう設計していくか」について、語り合いました。
 
この記事を読む際に、
「どのカテゴリーのホテルで新しい提案がしやすいのか」
「どんな開発フェーズから設計者が関わると、宿泊施設の新しさや個性を生み出しやすいのか」

という二つの観点を頭の片隅に置いて読んでみてください。いくつもの気付きがあると思います。
実際、私自身が取材時に目の前でこの座談会を聞きながら、このあたりにヒントがありそうだと感じました。
もちろん、それ以外にも、5人の設計者さんの発言の端々からヒントやインスピレーションを読み取っていただけると思います。


「STAY REPORT IN UDS HOTELS」で訪れた川崎のホテル「ON THE MARKS」

続いて、レポート記事「STAY REPORT IN UDS HOTELS」
長年ホテルの取材を続けてきたベテランのホテルジャーナリスト、永宮和美さんが、UDSが設計や運営を手掛けるホテルに実際に宿泊。客観的な立場からリポートしています。
図面や写真からだけでは読み取りきれないホテルの魅力が伝わってきます。
オペレーションやサービスという観点からホテルを考察することで、「このような空間デザインにどのような必然性や効果があるのか」「どのような背景や事情が、こうしたデザインを導いたのか」を感じ取っていただけると思います。


初公開のCGやスケッチで見せる「IMAGE GALLERY」

続いて、「IMAGE GALLERY」のコーナーをお楽しみください。
未完のプロジェクトや進行中のものを、CGとスケッチでお見せします。
ほぼ文字はなく、画像のみ。
なぜこのようなコーナーを設けたのか。それは、竣工したプロジェクトも興味深いのですが、時としてそれ以上に、プロジェクトの初期段階のCGやスケッチが、設計者の思い描くコンセプトやイメージが明快に物語るからです。
未完のプロジェクトや進行中のプロジェクトも含まれています。他では見られない貴重な資料を初公開です。


17の代表的プロジェクトを写真と図面で一気にお見せします

そして本書の山場が、「PROJECTS」のコーナー。
最新のものを含め、17のプロジェクトを、写真と図面で一気にお見せします。
目を凝らして写真や図面を眺めていただくと、多くの発見があるはずです。
その中でも特に、皆さんに体感していただきたいことがあります。
それは、これら17のプロジェクトに漂う、「複数の機能がシームレスに同居しているプランニング」「多様な人を受け入れてくれそうな寛容さ。入店しやすさ」「コミュニケーションや賑わいが生まれそうなカジュアルさ。リラックスした雰囲気」「可能性と自由を感じさせる余白」「施設ユーザーの利用のみで完結するのではなく、周辺エリアに楽しさや魅力を提供していること」。
この五つです。
この五つは、日々の取材を通して、実際にそれぞれの空間を訪れたり、客として宿泊したり飲食したりしてみた際の実感です。(「近代建築の五原則」ならぬ「現代店舗の五原則」とでも言いましょうか)
UDSのプロジェクトの多くが、少なくともこの五つの要素を共通して持っているように感じます。と同時に、これらの要素は、業種業態の区分を超えて、今、あらゆる空間づくりで求められています。そのことが、この増刊号を制作しようと考えた、最大の動機です。
 
 


「HOTEL EDIT YOKOHAMA」の1階共用スペース。跳ね上げ式の大型パーティション


「HOTEL EDIT YOKOHAMA」1階のグリーンショップ

上記の五原則だと、やや抽象的かもしれません。
一つだけ具体例を挙げましょう。
「ホテル エディット 横濱」(P.60)のページを開いてください。
これは、昨年横浜にオープンした宿泊特化型のホテルです。宿泊特化型ホテルの1階共用スペースは通常、とてもシンプルです。チェックインカウンターとカフェがある程度です。
ところが、ある事情により、「ホテル エディット 横濱」では、1階共用スペースを広くとることができました(その事情に関してはP.18参照)。そこにさまざまな機能が詰まっています。レストラン、グリーンショップ、トラベルグッズショップ、バー、ビジネスラウンジ。それらが渾然一体となって、一つのライフスタイルショップのようです。
このような1階のプランニングにより、この空間には、ホテルの宿泊客以外の人々も入ってくることができます。少なくとも、「入ってこられそうな雰囲気」が生み出されています。その結果、従来「チェックインと食事という、限定された用途に奉仕する空間」であったホテルの1階が、「何をしてもよい広場のような性格を備えた空間」へと近づいています。
この感覚、分かっていただけるでしょうか。
  
こうしたリーシングやプランニングが、「自由さ」「余白」「カジュアルさ」という現代の店舗に必要なアトモスフィアを生み出します。
ただし、「余白」と言うのは簡単ですが、これを実際に運営するとなると、簡単ではありません。例えば京都のホテル「アンテルーム」(P.26)。この1階にはギャラリー空間が広がっています。このギャラリーという余白が、このホテルを他とは圧倒的に異なる存在へと押し上げています。ところが、ここで注目していただきたいのは、この余白のポテンシャルを常に生かし続けるには、そのための人材が必要だという点です。答えを言ってしまえば、このホテルをUDSが自社運営していることによって、この余白を生かしやすい人材の配置が可能になっています。詳細は、「135〜137ページ」の記事をご覧ください。
このようなホテルが、冒頭で申し上げた、「企画」「設計」「運営」を1社で一貫して行うと空間づくりのブレイクスルーが可能になるということの一つの事例です。
  
そんなことを本書の17のプロジェクトから体感してください。各プロジェクトの写真はできる限り大きく掲載しました。写真から掴みきれない場合は、実際に現場を訪れて宿泊して体感してみてください。


UDS社内座談会/「場」をつくり、「あったらいいな」を実現する設計フィロソフィー

さあ、本書の山場である「PROJECTS」コーナーを過ぎました。
ここで、いったんコーヒー片手に小休止してくださいね。
そして、頭を整理してみてください。
「PROJECTS」コーナーを読んできて、何か気になりませんでしたか?
 
「どうしてこういう空間を生み出すことができたのだろうか」。
もう少し具体的に言います。
「どういう組織が、このような空間を生み出しているのだろうか」。
そこが気になりませんでしたか?
私は、各プロジェクトの取材をしながら、そこが大いに気になりました。
その疑問に迫るためにつくったのが、本書の終盤の記事です。

・UDS社内座談会/「場」をつくり、「あったらいいな」を実現する設計フィロソフィー
・WORKFLOW/ワークフローに沿って解析するUDSの特徴と仕事術
・COLLABORATOR COMMENTS/コラボレーターが見るUDSの組織&仕事術


この3本です。
この3本の記事を通して、どのような組織が上記のようなホテルやレストランを生み出しているのかを探求しました。
ポイントは、以下です。
・設計と運営の連動
・個人の能力を引き出す仕事のスタイル(「PSR」など)
・お客さんが楽しめるならまずやってみよう、という若く挑戦的な企業風土
・コーポラティブハウス時代からつづく、顧客目線の非作家的デザインスタイル
・「この施設ができると街に良い効果があるか」という都市デザインの視線


「UDS社内座談会」では、社内デザイナーらと代表の梶原氏による生の声を通して、上記のような特徴が具体的に浮かび上がってきます。
「WORKFLOW」では、彼らが、どのような思考と手法によって、ホテルや飲食店の新しいシーンを生み出しているかをあぶり出しました。
そして、「COLLABORATOR COMMENTS」では、これまでUDSと共に仕事をしたことのあるコラボレーターの方々に、社外の視点から、UDSとはどんな組織なのかを語ってもらいました。彼らのコメントから、UDSという組織の性質が明快に浮かび上がってきます。
個人的に、本書の読み方に関する提案をするなら、「COLLABORATOR COMMENTS」のコーナーを読んでから、「UDS社内座談会」「WORKFLOW」を読んでみてください。そうすると、よりいっそう、内容が頭に入りやすくなります。


COLLABORATOR COMMENTS/コラボレーターが見るUDSの組織&仕事術

  
  
  
今日の話をまとめます。
この増刊号は、二段階で役立てていただけるようにつくりました。

まずは、主要プロジェクトや最新プロジェクトを合計17件掲載しています。それを見て、いま求められている空間の雰囲気を疑似体験してください。
次に、そのような空間が、どんな組織によって、どんな思考プロセスを経て、生み出されているのかを読み取ってください。
この二段階です。
  
そして、冒頭に申し上げた通り。
「企画」「設計・デザイン」「運営」を1社で一貫して行うと、どんなブレイクスルーが可能か。
それが、この本の最大のテーマでした。
そのブレイクスルーの部分を見つけ出していただき、あなたの明日からの創造的なお仕事に役立てていただけたら、何よりです。
  
本日も、最後までお読みいただき、ありがとうございました。〈塩田〉
  

  
  
  
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日本で唯一、店舗デザインの最新事例とセオリーが学べる月刊誌「月刊 商店建築」。
最新の増刊号は、『CREATIVE HOTEL & COMMUNICATION SPACE』。
最新の月刊誌は6月号。
こちらでも、目次のチェックやご購入ができます。
  
 
【本書『CREATIVE HOTEL & COMMUNICATION SPACE』は以下のような方々にオススメです】
・「デザインという観点からのみでは、新しい空間が生み出せない。何がブレイクスルーを可能にするのか」と感じている設計者さん。
・「低価格競争に巻き込まれない個性あるホテルを生み出したい」と考えているホテルオーナーさん。
・「地域に根ざしたお店をつくりたい」「コミュニケーションやコミュニティーを醸成するお店を運営していきたい」と考えている飲食店オーナーやショップオーナーの方々。
 
 
【本書で登場するホテル】
・ホテル アンテルーム 京都
・新宿グランベルホテル
・ホテル カプチーノ(韓国)
・ホテル エディット 横濱
・オンザマークス(川崎)
・グリッズ ホステル ラウンジ 秋葉原
・ブンカ ホステル トーキョー(浅草)
 他多数




【関連資料として以下をお役立てください】
●『コンパクト&コンフォートホテル設計論』永宮和美著 2880円(税込)
 http://www.shotenkenchiku.com/products/detail.php?product_id=162
●商店建築2016年3月号「ホテル&旅館」 ※UDSの設計・運営による「ホテル エディット 横濱」が掲載されています。
http://www.shotenkenchiku.com/products/detail.php?product_id=264
  


合わせてご購入いただくことの多い『コンパクト&コンフォートホテル設計論』


『コンパクト&コンフォートホテル設計論』の中身

  
  
  

  
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増刊号 CREATIVE HOTEL & COMMUNICATION SPACE
2016年4月18日発売
定価:4,320円(税込)




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