いつもご愛読ありがとうございます。

最新号、商店建築2013年4月号
内容は、大リニューアルされた「阪急うめだ本店」や、20店以上の最新事例を凝縮した「バー&クラブ」特集。
これでもかというくらいに内容を詰め込んだためか、ご好評いただいております。
 
せっかくなので、よかったらその勢いでもう少しページをめくってみてください。華やかな百貨店や、バー&クラブのページの後に、こじんまりと、しかし、とても重要な特集が載っております。
それは、ジュエリーショップ特集(P.163~)です。
 
 

掲載店舗は、以下です。
 
〈掲載店舗〉
イマヨ 京都御池店(京都、設計/フレスコ)
俄 梅田ハービスENT店(大阪、設計/ギャルド ユウ・エス・ピイ)
アベリ 新丸の内ビル店(東京、設計/NITEN OSAWA ARCHITECT)
ヒーミー 大阪(大阪、設計/NITEN OSAWA ARCHITECT)
ピンクレモンツリー アルビ店(大阪、設計/CONSCIOUS)
セントロフェリシタ(仙台、設計/シュアサイン)
フレーム 福岡店(福岡、設計/エイスタディ)
ピコ福井店(福井、設計/エイスタディ)
 
 

さて、なぜこの特集が重要なのでしょうか。
それは、ジュエリーショップでは、ブランドの世界観を空間デザインで表現することが、とても強く求められるからです。もちろん、レストランでもファッションブティックでもヘアサロンでも、空間デザインで世界観を演出することが求められます。ところがジュエリーショップでは、ブティックと比べると、商品がとても繊細で小さいため、商品を前面に押し出して「こんな商品を売っています」「こんなテイストのブランドです」「こんな価格帯のお店です」と伝えることが、やや難しい。一方、レストランやヘアサロンと比べると、ジュエリーショップでの滞在時間は非常に短いので、じわりと滲み出る世界観の演出は、ジュエリーショップでは伝わりづらい。
 
そのためかジュエリーショップを取材していると、具体的で強いテーマ性や世界観を表現した空間デザインが目立ちます。今回、ジュエリーショップの取材をしながら、改めてそのことに気がつきました。
(ただし、既に非常に高い認知度を確立しているメガブランドや有名ブランドの店舗デザインは、この限りではありません)
 
 


「ピンクレモンツリー アルビ店」(P.179)のプレゼン資料。プレゼン時に、設計者の江原さんが明確なテーマ性や世界観を伝えていたことが感じ取れます

 
では、最新号の誌面から具体的に見てみましょう。
 
例えば、江原まゆみさん(CONSCIOUS)の設計による「ピンクレモンツリー アルビ店」(P.179)。
デザインテーマは、「パリの街角にあるスイーツのスタンドショップ」。その具体的なイメージは、コンペ時のプレゼンシートから明快に伝わります(P.181に掲載)。
 
 
 


「アベリ 新丸の内ビル店」(P.171)。アンティーク家具を補修したり改造したりして使用し、濃密な世界観が生み出されています。必見のお店です


大澤二天さんによる迫力の手書き図面

あるいは、大澤二天さん(NITEN OSAWA ARCHITECT)の設計による2店舗。
「アベリ 新丸の内ビル店」(P.171)と「ヒーミー 大阪」(P.175)。
どちらの空間でも大澤さんは、素材感たっぷりのアンティーク家具をアレンジし、まるで何十年も前からその店がそこにあったかのように見える、濃厚な世界観を生み出しています。
とても興味深いのは、大澤さんが手書きを多用して図面を制作しているということです(P.174、178に掲載)。
 
 
 


鳥かごをデザインモチーフにした「フレーム福岡店」の掲載ページでは、図面がたっぷり載っています

そして、齊藤良博さん(エイスタディ)の設計による2店舗。
「フレーム福岡店」(P.185)と「ピコ福井店」(P.190)です。
フレーム福岡店のデザインモチーフは、「鳥かご」。
ピコ福井店のデザインモチーフは、「おいしい生活」「料理」。
具体的ですね。
ただし、具体的なテーマ設定だからといって、簡単にデザインできるわけではありません。むしろ難しい。具体的すぎてベタになってはいけない。抽象的すぎて、何がモチーフになっているのか分からなくなってもいけない。大事なのは、具体性と抽象性のバランスです。そこで、フレーム福岡店の「鳥かご型什器」や「鳥かご型照明」のデザインがよく分かるよう、大きめの写真と図面を掲載しました。 
 
 

具体的なテーマ設定や強い世界観を、どのように空間デザインで表現するか。その際、特に、具体性と抽象性のバランスをどう取るか。
そんな視点でジュエリーショップ特集を眺めていただくと、ジュエリーショップ以外の業態にも応用できるデザインのヒントが盛りだくさんです。
 
なお、ジュエリーショップ特集のうしろのページには、ジュエリーショップの設計に役立つメタリック建材の広告も載っています。この建材広告は、編集部ではなく、弊誌広告部のスタッフが統括しているのですが、編集部と広告部が常に連携しながら、隣り合う「編集部の特集ページ」と「広告部の建材広告ページ」が、共通性のあるテーマ設定となるよう心掛けています。そうすることで、より読者の皆さんに実務で役立てていただきやすい誌面構成になるのではないかと考え、そんなふうに制作しています。
  
 


今回も、お伝えしたいことが多く、また長文になってしまいました。すみません。。。
最後に一点だけ、補足情報です。
最新のジュエリーショップの空間デザイン手法を完璧に押さえておく必要のある設計者の方々は、4月号のジュエリーショップ特集に加えて、以下2店舗も合わせて研究していただけば、バッチリです。

 「ルイ・ヴィトン 銀座並木通り店」(13年2月号掲載、設計/キュリオシティ)
 「ミキモト ブティック」(13年3月号掲載、設計/橋本夕紀夫デザインスタジオ)

これで、ジュエリーショップのコンペは、連戦連勝(・・・のはずです)。
上記のお店を超えるジュエリーショップを設計された際には、ぜひ編集部にご一報を。
<塩田>


ジュエリーショップの設計に役立つメタリック建材の広告


商店建築建築4月号好評発売中!

新作/阪急うめだ本店
   グランドカフェ&レストラン シャンデリアテーブル
業種特集1/バー&クラブ
業種特集2/ジュエリーショップ
表紙:ル・クラブ・ドゥ・トウキョウ

2013年03月28日発売
¥2,040



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