こんにちは。
毎月ご愛読ありがとうございます。

まずは、一つクイズから。
あなたは、「商空間デザインの世界に地殻変動が起きた時代」って、いつだと思いますか?
即答できますか?
できなれければ、職場のまわりの方々にもその質問をぶつけてみてください。面白い議論に発展すると思います。 
  
  

では、その答えは。。。
はい、答えは、「商店建築 2015年8月号」に載っています。
「それは読まねば」と即決された方は、こちらの近道(http://www.shotenkenchiku.com/products/detail.php?product_id=250)へ。
「もう少し中身を見せてくれ」という方は、引き続き、以下をお読みください。15分で、8月号の目玉企画の概要をお見せします。その目玉企画の中に答えが載っています。


では、「商店建築 2015年8月号」について紹介しましょう。
  
1956年8月に創刊した小誌は、今月号で、60年目を迎えました。
これはまさに、いつも変わらずご愛読をくださっている皆様のおかげです。そして、毎月取材にご協力いただいている設計者の方々、店舗オーナーの方々、さらに、カメラマンさん、ライターさんなど、協働者の皆さんのおかげです。
この場を借りて、心よりお礼申し上げます。いつもどうもありがとうございます。
    
そんな感謝の気持ちを込めて、読者の皆さんに特別な企画をお届けしたくて制作したのが、8月号。
「創刊60周年 特別企画 PLAY BACK 60 YEARS」です。
巻頭に、内田繁さんと杉本貴志さんによる特別対談を掲載しました。
これは、永久保存版です。


誌面には書かれていない、ヒリヒリする対談当日の様子も少しお伝えしましょう。
対談の会場は、ホテルニューオータニの宴会場。
先に到着されていたのは、杉本さん。
その後に、内田さんが到着。
   
内田さん「おう、久しぶり」
杉本さん「おう、ちょっと痩せたんじゃないか」
  
  
日本のインテリアデザイン界を代表するこのお二人のオフィシャルな対面は、いつ以来でしょうか。もしかして、数十年ぶり?!
部屋の中に、心地良い緊張感が走りました。
  
デザインに対するスタンスは、対極的といってもよいくらいに異なるお二人。
内田さんは、モダンデザインの流れを踏まえながら、色彩や造形をコントロールしていく。また、近年は、デザインにおける弱さや儚さも重視しています。
一方、杉本さんは常に、「デザインもアートも、置かれた空間やオレ自身に、どれだけ緊張感やヒリヒリする衝動を与えてくれるかが重要だ」と個人の感覚を再優先し、自身のデザインワークにおいては「恣意性を捨てること」を念頭に置いてきました。
    
また、70年代に二人が設計した代表的なバーにおいても、アプローチが対極的。
内田さんは、バー「バルコン」の設計にあたって、「入りやすさを重視した」と語り、杉本さんは、バー「ラジオ」の設計にあたって、「あえて敷居を高くした」と語ります。その真意は、対談の中で明かされます。
   
しかし、こうした対極的なスタンスの一方で、お二人には共通性があります。内田さんは、「近代合理主義が捨ててきた歴史や土着性をもう一度拾い上げてデザインに生かしていくべき」と語り、杉本さんは、「世界中で同じような店をつくってもしかたない。デザインはカルチャーの表明なんだ。それがないデザインはつまらない」と言う。対談当日も、そうしたやりとりを目の前で見ていて、お二人の共通点を感じました。
   
そんなお二人なので、2時間ほどの対談の間も、火花が散ったり、共鳴したり。。。
決して予定調和的になることがなく、ドキドキワクワク、ときにハラハラする濃密な時間でした。


   
  
  
対談のテーマは「私が衝撃を受けたインテリアデザイン」。事前に、お二人からからそのテーマで強く印象に残っている空間を挙げていただきました。そのリストが以下です。60年代後半から70年前後に集中をしています。

〈内田繁さんが衝撃を受けたインテリアデザイン〉
クラブ ラ・カルタ(1965、岩淵活輝)
「空間から環境へ」展(1966、@銀座松屋)
サパークラブ カッサドール(1967、倉俣史朗)
喫茶店 ナレッジ(1968、境沢孝)
ショップ カプセル(1968、倉俣史朗)
フジエテキスタイル ショールーム(1972、北原進)
バー ラジオ(1972、杉本貴志)
バー バルコン(1973、内田繁)
  
〈杉本貴志さんが衝撃を受けたインテリアデザインやアート〉
バー スピークロウ(1970、倉俣史朗)
カッサドール(1967、倉俣史朗)
カール・アンドレ(1935〜、アメリカのミニマルアート作家)
リチャード・セラ(1939〜、アメリカの画家、彫刻家)


対談中の内田繁さんと杉本貴志さん(撮影/奥山智明)

    
    
    



対談の中では、ハッとする発言がいくつも飛び出しました。重要な発言はすべて、今月号の誌面に収録しています。実は当初、8000字程度の原稿にしようと想定していたのですが、カットできない重要な発言が多く出たため、10000字を超える原稿となりました。
全文を、2度、3度と読み返していただくと、いくつもの発見と刺激が得られるはずです。
では、以下に、お二人の発言から、ほんの一部だけ抜粋してみましょう。
  
  
内田さん・・・1960年代後半は、「デザインはどの方向に行こうか」ということをみんなが悩んだ時期でもあるんだ。杉本もそうだと思うけれど、現代美術というものに我々は非常に大きな影響を受けた。

杉本さん・・・(60年代の後半頃)「デザインとはどういうことか。デザインは社会に対してどこまでのことができるのか」ということにみんな興味を持っていた。そのための大きなテーゼが、「ミニマル」であり、それが全世界を席巻した。
  
内田さん・・・当時の百貨店は、いろんなデザイナーの商品が混在して置かれていたけれど、「カプセル」(設計:倉俣史朗)によってファッションデザイナーごとの顔が見えるようになったことが画期的で、後にファッション専門店の集積であるパルコに繋がっていったんじゃないか。
  
杉本さん・・・教育には、いくつかの大きな問題があって、学校や講師だけで解決できることのレベルを超えている話かもしれないけど、今、一番問題なのは、学生が卒業して巣立っていく時に最初にタッチする社会が成熟していないということ。



聞き手役の小泉誠さん(撮影/奥山智明)

聞き手を務めていただいたのは、デザイナーの小泉誠さん。
実は、小泉さんは高校時代、内田さんと共にサッカーをしていたそうです。また、小泉さんは、杉本さんから声をかけていただき、現在、武蔵野美術大学で教鞭をとっています。そうしたポジションにいる小泉さんが、お二人から貴重なデザイン論を引き出してくださいました。
   
   
    


この永久保存版の対談コーナーに加えて、「写真で振り返る商空間デザイン年表」もつくりました。
題して、「Photo Review 60 years」
60年間を3号に渡って振り返ります。今月号では、創刊から最初の20年「1956~1976」を掲載。
   
  
特に60年台後半から、強烈な印象を放つ空間デザインが出始めていることが分かるかと思います。
では、当時、どうしてこんなにアバンギャルドな店舗が次々と生み出されたのでしょうか。その理由を、当時を知るデザイナーの北原進さんが自身の体験を交えて明快に証言してくださいました。(P.60)


北原進さん

  
  
  
また、60年代後半から店舗設計のキャリアをスタートさせた高取邦和さん、大橋正明さん、原兆英さんにもインタビューし、店舗デザインの世界が、そしてそれを支える社会が、どんな様子だったのかをうかがいました。
なぜこうしたインタビューをしたかというと、写真年表だけでは伝わらない当時の人々の息づかいを伝え、年表を立体的なものにして皆さんにお伝えしたかったからです。
インタビューを通して、店舗デザインには、そこに関わる「人」や「音楽」が重要な原動力になっていたことが感じ取れました。「人」や「音楽」の存在が、今日以上に、文化を牽引する重要なドライビングフォースになっていたのです。
そんな時代性を現代と比べていただくと、皆さんの店舗づくりのお仕事にも、新しいヒントが見つかるかもしれません。
  


高取邦和さん


大橋正明さん


原兆英さん

  
   

では、ようやく、ここで正解を。
ここまで読んでくださった皆さんはお分かりのとおり、冒頭の質問、「商空間デザインの世界に地殻変動が起きた時代はいつか」の答えは、ひとまず、「60年代後半」です。
そう、ひとまず、なんです。
というのは、これが唯一の答えではないからです。視点を変えると、「商空間デザイン史の地殻変動」と言える時期が他にもあります。その答えは、ただいま制作中の9月号と10月号の中に見い出していただけるでしょう。どうぞお楽しみに!!
  
  


『インテリアデザインが生まれたとき 六〇年代のアートとデザインの衝突のなかで』(鈴木紀慶 著、鹿島出版会)

なお、この60年代後半のインテリアデザインと時代状況について、もっと体系的に知りたい方は、今年6月に刊行された『インテリアデザインが生まれたとき 六〇年代のアートとデザインの衝突のなかで』(鈴木紀慶 著、鹿島出版会)をお読みください。商店建築8月号(P.208)でも、注目の新刊として紹介しています。インテリアデザイン業界に関わる方にとって必読書です。
皆さんも、この時代からの文脈を知らずに、職場でインテリアデザインの話などしていると、先輩方から「そんなこと、50年前から言われているよ」とつっこまれかねません。勉強しておきましょう。
   
   
引き続き、9月号、10月号でも、「創刊60周年 特別企画 PLAY BACK 60 YEARS」を制作していきます。
どうぞご期待ください。
  


ただいま制作中の9月号はこんな内容です

日本で唯一、店舗デザインの最新事例とセオリーが学べる月刊誌「月刊 商店建築」。
最新号は8月号。
こちらでも、目次のチェックやご購入ができます。
  
本日も、最後までお読みいただき、ありがとうございました。〈塩田〉


  
  
  


【今月号は以下のような方々にオススメです】
●インテリアデザインを根源から考え直して設計に取り組んでみたい方。
●「商空間デザインの世界に地殻変動が起きた時代はいつか?」という質問に、自分なりの答えを即答できなかった方。
●歴史を知ることによって、現代の時代状況と自分自身の立ち位置を明確に把握し、時代を読み込んだ上で店舗デザインをしていきたいと考えている方。



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