こんにちは。
毎月ご愛読ありがとうございます。
さて今日のブログでも、多忙なあなたに代わって目玉記事を拾い読み。お時間ある方は、ぜひ書店へ。
 
皆さん、夏バテなどされていないでしょうか。
蒸し暑い毎日の中で、表紙が最高にクールなのが、「月刊 商店建築」8月号。この表紙は、新作ホテル「W広州」です。詳しくは、先日のブログと本誌をご覧くださいませ。

しかし、、、W広州だけじゃないんです、8月号は。
ホテル特集です。
ホテルの設計を手掛けている方、そして、これから手掛けたい方、必見です。


「ザ・ゲートホテル雷門 by HULIC」の宿泊者専用ラウンジ。スカイツリーが目の前に。気持良すぎます


同じラウンジの昼の景色。お酒も飲めるんです。爽やかすぎます

今回のホテル特集は、バラエティーに富んだ誌面になりました。

例えば、内田繁さんのデザインによる「ザ・ゲートホテル雷門 by HULIC」(P.64)。
浅草・雷門の前にオープンした新築ホテルです。テーマは、親しみやすく寛げる「インティメイトなホテル」。スタッフによるサービスも、フォーマルとカジュアルの中間と言える、親しみやすいサービスです。
 
建築的な工夫として興味深い点は、1階から13階ロビーフロアへまず客を誘導する動線です。たどり着いたロビーの空間からは、ガラス張りの大きな開口部越しに東京スカイツリーを眺めることができます。雷門や仲見世通りも見下ろせます。まず「江戸」と「最新の東京」を見せ、「浅草に来た」という気分を体感させる動線演出です。
ロビー、レストラン、客室のデザインは、華美にならず、落ち着いた演出です。一般的に、ホテルの客室は白っぽい色味のデザインが多いですが、このホテルでは、ダークな色味を基調にして、内田さんらしいビビッドなカラーをところどころに入れています。粋なデザインです。
 
なお、実際に宿泊してみると体感できるのですが、空間デザインやアートワーク、サインデザインなどの良さもさることながら、アメニティーや水栓器具などの肌に触れる細部に丁寧さを感じます。オリジナルのシャンプーやボディソープ、歯ブラシ、髭剃り、靴磨き、湯沸し器、朝食のオレンジジュースなど、とても細かい部分が、同じ価格帯のホテルに比べ、ワンランク上質なものになっています。そうした細部に「おもてなしの精神」を感じます。


ザ・ゲートホテル雷門の客室。落ち着いた色味の中に差し色が映えます


ザ・ゲートホテル雷門の朝食。搾りたてオレンジジュース。オーダーしてから焼いてくれる卵料理。美味しすぎます

その他にも、隈研吾さん、GAデザインインターナショナル、堀木エリ子さん、辻村久信さん、イリアが参加してデザインした、長崎県の「オリーブベイホテル」(P.72)など、見どころが満載です。
新潟の「扇屋旅館」、和歌山の「かつうら御苑 天」、宇都宮の「ホテル アールメッツ宇都宮」などなど、宿泊施設のリニューアルの参考になるプロジェクトも掲載しました。
 
他にもお伝えしたい物件があるのですが、盛りだくさんで、お伝えしきれません。すみません。。。




ホテル特集の記事「『新世代型ドミトリー』設計ガイド」

 
さて、ここで一休みしてください。
 
つづいて、本日の後半は、ちょっと変わった記事のご紹介。
ホテル特集の記事(P.102)です。
テーマは、「『新世代型ドミトリー』設計ガイド」。
 
みなさんの街にも増えていませんか、新世代型ドミトリー。
「新世代型ドミトリー」というのは編集部でつくった造語です。安い施設なら一人一泊3000円程度から宿泊できて、客室はシンプル。施設によっては大部屋やカプセル風のベッドもあります。しかし、館内のデザイン性が高く、キッチン、ダイニング、バーラウンジといったコミュニケーションスペースが充実しています。国内外の旅行者同士の交流、あるいは、旅行者と地元の人々との交流を促すスペースが随所に仕掛けられています。

そんなホテルを、「新世代型ドミトリー」と名づけました。
一言で言えば、「コミュニケーションスペースを充実させた低価格ホテル」。
ここ2、3年、全国で増加中です。設計者の皆さんにも、こうしたホテルの設計依頼がくる可能性があります。依頼が来てからでは遅いので、今のうちにプランニングの要点だけでも押さえておきましょう。そんな主旨の記事です。
特に、新世代型ドミトリーの設計の要となる、パブリックスペースのプランニングに焦点を当てました。

分析する事例は、以下の3件。
あえて異なる立地の施設を選びました。

ホテルグラフィ(東京・根津 2013年2月オープン)
  総合デザイン監修/トーンアンドマター 広瀬郁
  建築デザイン監修/丸恭子一級建築士事務所 丸恭子
 
ピースホステル京都(京都、2013年4月オープン)
  プロデュース/ティーエーティー 田畑伸幸
  デザインディレクション/HIGHSPOT DESIGN 加藤直史 廣瀬悠
  設計/加藤淳一建築設計事務所 加藤淳一 
 
高野山ゲストハウスkokuu(和歌山、2012年10月オープン)
  設計/アルファヴィル 竹口健太郎 山本麻子


ホテルグラフィのパブリックスペース。左手にダイニングとキッチン(撮影/千葉正人)


誌面では、パブリックスペースをどう組み立てているのか、解析しました

ホテルグラフィは、「ソーシャルアパートメント」事業を展開してきたグローバルエージェンツ社が運営しています。長期滞在者、短期滞在者、日本人、外国人、ビジネスマン、研究者、そしてワークショップに参加する人々や地元の人々など、多様な人々が集まってコミュニティーが生まれていく。そんな施設です。特に、さまざまな人種の人がコミュニケーションを取る際に、食材、調味料、料理などが会話のきっかけになったり、相手を理解する助けになったりします。そうした側面に配慮し、充実したキッチンとダイニングが用意されています。
 
 


ピースホステル京都のパブリックスペース。朝食タイムのにぎわい(撮影/藤本一貴)

ピースホステル京都は、京都駅から至近のリーズナブルなホテル。2段ベッドの部屋もあり、ドミトリーらしいつくりですが、1階のダイニングキッチンとバーラウンジは、コミュニケーションを誘発しそうな開放的な空間。朝食の時間には、世界中から集まった旅行者たちが思い思いの食事を摂りながら、互いに情報交換をして、一日の観光の予定を立てたり、にぎわっています。
この雰囲気を読者の皆さんにお伝えしたい。その上で、図面を見ていただきたい。そんな思いから、どの事例においても、あえてにぎわう時間に撮影させてもらいました。(運営者の皆さん、設計者の皆さん、ありがとうございました!!)
誌面の写真からは、そんなにぎわいが伝わるのではないでしょうか。
 
 


高野山ゲストハウスkokuuのパブリックスペース。オーナー夫妻も交えて世界各国から訪れたお客さんたちの会話が自然とはずみます(撮影/藤本一貴)

そして、高野山ゲストハウスkokuu。
立地からして個性的です。高野山エリアの宿泊施設は、1泊1万円以上する宿坊が多いそうで、バックパッカーには少々高い。そこで、ご自身も高野山生まれのオーナー、高井良知さんは、もっと気軽に滞在して高野山の歴史や文化を楽しんでもらおうと考え、このゲストハウスを開業しました。
1本の通路の両側に、バー、ラウンジ、水まわり、個室、ドミトリーが並ぶ、シンプルな構成。コンパクトなスケールと切妻屋根があいまって、まるで住宅のような親密さ。朝と夜の食事の時間には、オーナー夫妻を交えて、宿泊者同士のコミュニケーションが弾んでいます。




改めて、おさらいです。新世代型ドミトリーの魅力を支えているのは、コミュニケーションという付加価値。
そのコミュニケーションを醸成できるか否かは、空間デザインの仕掛けによる部分が少なくありません。ここが、設計者の皆さんの腕の見せどころです。
図面をじっくり見ていただくと、多くの発見が得られます。

 
 
 
ホテルが盛りだくさんの8月号。ホテルのデザインでアイデアをお探しの方にはオススメの一冊です。
更に、好評発売中の増刊号「コンパクト&コンフォートホテル設計論」「World Grand Hotels」も合わせてご覧いただければ、ホテル設計の研究は完璧です。〈塩田〉
 


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商店建築8月号
新作/W 広州
業種特集1/ホテル
業種特集2/クリニック&メディカルスペース
マテリアル特集/ファブリックにできること

2013年7月27日発売
2,040円(税込)



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