三浦展、藤村龍至 編著
発行/平凡社新書
760円+税

昨夏に行われたシンポジウムの発言録である。建築、社会学、経済学など職域が異なり、年代も異なるパネラーがディスカッションを繰り広げた。
震災復興の現状と方向性に関する議論をきっかけとしながらも、議論の主題は、震災以前から破綻しつつあった資本主義社会のシステムへと及ぶ。高度経済成長期には、「一住宅=一家族」「プライバシー」「私有」といった概念をベースにした住宅供給システムが可能であったが、少子高齢化、人口減少、成長経済の行き詰まりなどを背景に、もはやそれは成立しないという。それに代わって、パネラーらが提示するのは、「互助的関係」「共有」「福祉」「私有と固有の折衷」「多様なシステムの共存分立」といった概念をベースにした新しい社会像だ。こうしたパラダイム転換の必要性を体感的に覚知している若年層だけでなく、むしろそれ以外の層の人々に読んでもらいたい一冊。



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