最終回となる今回は、万博会場で目にした圧倒的なエンターテインメントやパフォーマンスを紹介する。また、産業遺産を活用した今回の会場については、万博後の展開にも注目していきたい。
写真・文/樋口正一郎(美術家・都市景観研究家)
上海と言えば、租界時代はジャズを中心とした音楽都市であり、少し前までは上海雑技団のアクロバットが日本でもよく知られていた。共産党のイメージとは反対に、人民の国ということからすれば当然エンターテインメントは欠かせない。香港映画から出発した世界有数の映画大国の力を、上海万博では最先端の映像を含めたさまざまな分野の技術を総合したエンターテインメントを確立した。
世博軸が黄浦江にぶつかる親水平台の音楽噴水でのシンフォニーや、歌声に合わせた噴水とライティングのパフォーマンスでは、今まで開発された技術や表現を総合し、惜しげもなく、これでもかこれでもかと嵐のように、津波のように圧倒する迫力に観客は酔いしれていた。
祝典広場の池から世博軸を振り返れば、巨大な水仙のようなモニュメント「陽光谷」のLEDを使った映像の列も、エンターテインメント大国として、世界に覇権を主張してゆくための布石だ。
Eゾーン「ベストシティ実践区」にあるテーマ館「未来館」はロンドン、テートモダンの上海版。火力発電所跡の大空間の映像とライティングの異次元体験が万博後どのような使われ方をするのか、また訪れるのが楽しみだ。