京都インテリアデザイン散歩 「京都に行ったら、このインテリアを見よう」
2018/05/25 取材日誌
いつも「月刊 商店建築」をご愛読いただき、ありがとうございます。
京都に行ってきました。
最新のカフェなど、いろいろ見てきました。
読者の皆さんとシェアしたいと思ったので、本日のブログのテーマは、「京都に行ったら、このインテリアを見よう」です。
本日は、皆さんを"京都インテリアデザイン散歩"にご案内します。
◆グランドプリンスホテル京都
まず、金曜日に仕事を終えて夕方、新幹線に飛び乗ります。
京都に着いたら、「グランドプリンスホテル京都」にチェックイン。
建物は、村野藤吾さんの設計によるもの。曲線を多用した動きのある空間デザインは、日常の凝り固まった身体と脳を自由な状態へと解放してくれる。改めてそう感じさせる建築です。
最近、インテリアの一部が、乃村工藝社と、小坂竜さん率いるANDによって改装されました。その詳細は、5月28日発売の「月刊 商店建築」2018年6月号に掲載しています。お楽しみに。
6月号は、「1冊まるごとホテル特集」! ホテルは総合芸術です。ホテルには、建築、飲食、物販、ラウンジ、住空間(客室)、グラフィック、アートなど、商業デザインに関わるあらゆる要素が包含されています。ホテルには、はっきりと時代のニーズとトレンドが反映されます。ですから、6月号は、ホテルを設計しているデザイナーの方々はもちろんのこと、他の業種で設計をしている方々にも知っておいていただきたい内容です。
さて、グランドプリンスホテル京都でぐっすり眠ったら、午前中からカフェ巡りスタート。
◆ブルーボトルコーヒー 京都カフェ
まずは、南禅寺の近くにオープンした「ブルーボトルコーヒー」。
2棟の民家を改装した大胆な空間です。
大きな建具や吹き抜けが、日本家屋の小さなスケール感を超越しており、日本家屋が何か別のものに見えてきます。そんな、既存空間の文脈を変えてしまうようなデザインです。
また、奥へ奥へと空間が流動的に連続していく構成は、日本的な雰囲気を感じさせます。
設計を手掛けたのは、一連のブルーボトルのショップを設計してきた長坂常さん(スキーマ建築計画)。
ちなみに、ブルーボトルのエスプレッソは、酸味が強めで、脳にガツンときます。目が覚めますね。
ちなみに、「BLUE BOTTLE COFFEE 三軒茶屋カフェ」は、最新号「商店建築」2018年5月号のカフェ特集に掲載しています。
http://www.shotenkenchiku.com/products/detailp.php?itemid=2600
◆アラビカ東山
続いて、「八坂の塔」がある観光エリアに移動しましょう。
ご存知、カフェ「アラビカ京都」です。
「商店建築」2015年3月号で掲載しました。
http://www.shotenkenchiku.com/products/detailp.php?itemid=1409
今でも、国内外からの観光客で行列が絶えません。
ファサードに使用された曲面ガラスが、違和感なく緩やかに人々を引き込みます。店内には、スタッフと客が共有する白亜のロングカウンター。コーヒー豆のディスプレイ。小規模ながら見どころたっぷりのカフェです。
設計を手掛けたのは、加藤匡毅さん(パドル)です。
なお、同じく加藤さんの設計による「アラビカ 京都 嵐山」も、大変オススメ。
「商店建築」2015年11月号で表紙カットになったお店です。
http://www.shotenkenchiku.com/products/detailp.php?itemid=1680
話題のカフェを次々デザインしている加藤さんの設計手法を知りたい方は、こちらのバックナンバー↓も要チェックです。
http://www.shotenkenchiku.com/blog/entry-728.html
◆大塚呉服店
続いて、アラビカ東山の目の前にある「大塚呉服店」。
施工方法が特徴的です。既存のタイルの表面をサンダーで削り、新しい面を露出させています。「何をどう残すか」という点に関して、設計者に示唆を与えてくれる秀逸なデザインです。
アートディレクションおよび設計を手掛けたのは、デザイナーの関祐介さん。関さんは以前から「図面に描けないデザイン」ということを一つのテーマにしています。この店は、その好例と言えます。
「商店建築」2013年10月号に掲載しました。
http://www.shotenkenchiku.com/products/detailp.php?itemid=954
◆STARBUCKS COFFEE 京都二寧坂ヤサカ茶屋店
八坂の塔の横を抜けて、石畳の道を歩いていくと、「スターバックスコーヒー 京都二寧坂ヤサカ茶屋店」があります。
大好評をいただいた「商店建築」2017年11月号のカフェ特集にて、表紙にしたお店です。
http://www.shotenkenchiku.com/products/detailp.php?itemid=2428
町家の外観、スケール感、エレメントなどをできる限り残しながら、室内には、内照式カウンターなどの新しい要素を丁寧に新設しています。
空間の中を観察すると、工事が非常に大変だったことがうかがえます。開業とのオペレーションも通常の店舗のようにはいかないでしょう。にもかかわらず、なぜこの場所に出店したのか。その理由や戦略は、「商店建築」2017年11月号のインタビュー記事でご覧ください。詳細が載っています。カフェ特集は品切れになる場合が少なくないので、カフェの出店戦略に興味のある方はお早めに。
◆ダンデライオン・チョコレート 京都東山一念坂店
そこから、すぐ近くには、先月オープンした「ダンデライオン・チョコレート 京都東山一念坂店」があります。
このエリアの町並みに馴染んだ門構えと外観を見ながら、中に足を踏み入れてみると、開放的で明るい空間が広がっています。大きな建具を利用した縁側席がオススメ。2階も、天井の高い居心地よい空間です。
「ダンデライオンチョコレート ファクトリー& カフェ 蔵前」は、「商店建築」2016年5月号に掲載されています。
http://www.shotenkenchiku.com/products/detailp.php?itemid=1871
「ダンデライオン・ チョコレート 鎌倉」は、「商店建築」2017年5月号のチョコレートショップ特集に掲載されています。
http://www.shotenkenchiku.com/products/detailp.php?itemid=2243
◆カフェ&シャンパーニュ 祇園ちから
さて、次にちょっと歩いて、祇園に移動しましょう。
「カフェ&シャンパーニュ 祇園ちから」です。
非常に美味しいフレンチトーストをシャンパンと共に楽しむというお店です。
2階のカフェを、アーチストの名和晃平さん率いるSANDWICHがデザインしています。
1階のショップは以前からあったのですが、2階に先日、カフェが新設されました。
このカフェは、決して奇をてらったデザインではないのですが、随所に名和さんの作品が展示されいている他、テーブルやイスがオリジナルで制作されているので、全身で特別感を感じることができます。とてもオススメのカフェです。
◆ISSEY MIYAKE KYOTO
さらに、鴨川を渡って、市街地へに歩きましょう。
ブティック「イッセイ ミヤケ キョウト」へ行きます。
町家と蔵を改装したショップです。
黒を基調としたやや暗めの空間に、イッセイミヤケの服の鮮やかな色味が映えます。
中庭を挟んで敷地の奥には蔵があり、その中がギャラリーとして使用されています。
◆イソップ 京都店
続いて、そこから歩いてすぐの場所にある「イソップ 京都店」へ。
デザインを手掛けたのは、緒方慎一郎さん(SIMPLICITY)。
「商店建築」2014年2月号の表紙になったお店ですね。
オーストラリア発のスキンケア商品が、日本的な空間の中に違和感なく陳列されています。
小さな店舗ですが、あえてアプローチを長くとることで、商品を見る時には、非常に落ち着いた静かな気持ちで見ることができます。日本の書画を思わせる、縦にディスプレイされたボトルが強い存在感を放っています。
http://www.shotenkenchiku.com/products/detailp.php?itemid=1101
なお、比較的近い場所に、トラフ建築設計事務所の設計による「イソップ 河原町」もあります。
こちらはラボのような素っ気なさと無国籍性、そして吹き抜けによる大きなスケール感を持った店です。
「 河原町店」は、「商店建築」2014年5月号に掲載しました。
http://www.shotenkenchiku.com/products/detailp.php?itemid=1180
では、なぜ、イソップは、近距離にあえて2店舗同時に出店するのか。
しかも、その2店舗を別のデザイナーに設計依頼し、まったく雰囲気の異なる店をつくるのか。
わかりますか?
「イソップ出店をめぐる秘密」を知りたい方は、「商店建築」2016年8月号の記事と、このブログ↓をご覧ください。
多店舗展開に関する大きなヒントが隠されています。
http://www.shotenkenchiku.com/blog/new/entry-709.html
◆ジンズ 京都寺町通店
続いて、「ジンズ 京都寺町通店」へ移動しましょう。
今や誰もが知っているメガネの専門店ですね。
この店の設計は、建築家の中村竜治さん。
「商店建築」2017年4月号に掲載されています。
http://www.shotenkenchiku.com/products/detailp.php?itemid=2197
このプロジェクトは、昨年のJCDデザインアワードにおいて、審査員らの圧倒的にな支持を得て大賞を受賞しました。
この店は、ある建物の1階に入居している店なので、「インテリアデザイン」ではあるのですが、このインテリアデザインは、建物の従属物として存在しているのではなく、むしろ建物以上に存在感を放ち、見る者に建物の存在を忘れさせます。その結果として、インテリアと街が直接に対峙しているように感じさせます。
店内に入ると、コンクリートによる建築内建築と、ミラー貼りの壁面によって、”小さな建築”が生み出す表の空間と裏の空間が繰り返しされ、無限遠へと続いていくように見え、そこに日本的な空間性を感じます。その空間性は、建築家の槇文彦さんがかつて指摘した「奥性」という日本的な都市の在り方に近いと感じます。
◆神乃珈琲 京都店
歩き疲れたので、少し休憩。
というわけで、5月23日にオープンしたばかりの「神乃珈琲 京都店」へ。
ドトールが運営するブランドです。開業前に一足早く店内を見学してきましたが、高級列車のような席があったり、吹き抜けの開放的な席があったりと、非常にゆったりくつろげるカフェです。
カジュアルなコーヒースタンドが増えている今、こうした年配のお客さんもゆったり過ごせるようなカフェは貴重な存在ですね。
なお、このカフェブランドの1号店「Factory & Labo 神乃珈琲」は、「商店建築」2017年5月号に掲載されています。これが、大型の焙煎工房を備えた驚きの空間なんです。まだ見ていない人は、ぜひ早めに見てください。
http://www.shotenkenchiku.com/products/detailp.php?itemid=2261
こうしたロースタリー併設カフェは、大きな時代の流れとして、今後も増えていくと思われます。そこで、最新号「商店建築」2018年5月号の「カフェ&ロースタリー大特集」にまとめて掲載しました。メルボルンからのレポートも載せた渾身のカフェ特集です。カフェ設計のヒントを詰め込みました。こちらも人気の号ですので、品切れにならないうちに、どうぞお早めに入手してください。
◆京都グランベルホテル
いやいや、一日歩いて疲れましたね。
というわけで、祇園にある「京都グランベルホテル」へチェックイン。
「商店建築」 2017年10月号に掲載されているホテルです。
設計を手掛けたのは、UDSとthe range design。
空間デザインは、よく見ると、必ずしも日本的なエレメントをさほど多く使っているわけではないのですが、全体として日本的な印象を与えるという、絶妙なデザインが施されています。
地下の客室や地下の大浴場を、閉塞感の無い伸びやかな空間としてデザインしている点に注目してください。そこに数々の設計ノウハウが投入されています。
http://www.shotenkenchiku.com/products/detailp.php?itemid=2384
地下の客室に宿泊します。
部屋の幅いっぱいのベッドが気持ちいい。
では、おやすみなさい。zzz
◆KYOTO TOWER SANDO フードホール
ぐっすり寝たら、帰京に向けて京都駅へ。
おっと、その前に腹ごしらえを。
京都タワーの地下にあるフードホールへ行きましょう。
今、日本全国でフードホールという業態がトレンドになっています。
ここKYOTO TOWER SANDOのフードホールは、非常にフードホールらしくつくられています。
専有席と共用席の両方がある。全体プランが複雑。キレイ過ぎず、ほどよく汚れたノイジーでカジュアルな雰囲気を演出している。それらの結果として、非常に賑わっている。
そのあたりが、この店に、ニューヨークで見られるようなフードホールらしいフードホールの雰囲気を生み出しています。
◆MALEBRANCHE 京都タワーサンド店
最後に、京都タワー1階に昨年オープンした「マールブランシュ 京都タワーサンド店」でお土産を買えば完璧ですね。
茶畑の風景をイメージした、グリーン基調の動きのある空間がインパクトを生み出しています。騒々しい駅前ターミナルに立地しているため、強めのデザインでアピールする必要があるわけです。
この店は、「商店建築」2018年3月号に掲載されています。
http://www.shotenkenchiku.com/products/detailp.php?itemid=2535
◆ホテル「ENSO ANGO(エンソウ アンゴ)」
さてさて、京都から戻り、早速、東京でホテル関連の記者発表会に出席してきました。
その内容も、なんと京都のホテルプロジェクト。
「ENSO ANGO(エンソウ アンゴ)」というプロジェクトです。今年10月にオープンします。
四条通と五条通にはさまれたエリアに5棟の建物が点在し、5棟合わせて一つのホテルとしての機能を担うという考え方です。
分散型のホテルですね。
各棟は、シェアキッチン、バー、ジムなどを持っていて、チェックインの相互連携や施設の相互利用ができる予定です。
全体のディレクションを内田デザイン研究所が行い、同事務所の他、安藤雅信さん、安藤明子さん、寺田尚樹さん、日比野克彦さん、アトリエ・オイといった参加クリエイターが各棟をデザインしています。
「街に泊まる」ようなイメージで宿泊できそうで、開業が楽しみです。
本日は、長い「京都インテリアデザイン散歩」にお付き合いいただき、どうもありがとうございました。
ここで紹介できたプロジェクトは、ほんの一部で、京都にはまだまだたくさんの魅力的な店舗デザインが溢れています。
これまで小誌に掲載してきた京都の店舗も、これら以外にまだまだ膨大にあります。
そして今後も、2019年末に開業予定のエースホテルを含め、京都ではたくさんの興味深いプロジェクトが進行中です。
これからも「月刊 商店建築」の誌面で、京都の魅力的な店舗デザインを多数掲載していきますので、どうぞお楽しみに!!
さて、帰りの新幹線で報告書を書かなくちゃ。笑
〈塩田〉
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