1階ロビーを施工中


リニューアル工事中の御茶ノ水のビジネスホテル「お茶の水イン」。その工事を潜入レポートしているこの連載も終盤。


レセプションカウンターを現場にて製作中


ロビー内のミーティングラウンジ


ロビー内のコーヒーカウンター

工事最終日に現場を訪れてみた。
1階では、5、6人でレセプションカウンターを製作中。現場を取り仕切るJTB商事の松村一美さん(建装部)は、残り時間と作業量を見比べながら作業に無駄が出ないよう要所で指示を出す。
今日ばかりは、ホテルスタッフの方も仮のレセプションカウンターすらない状態で接客をせねばならず、大変そうである。

また、レセプションカウンターの反対側では、壁面の入隅部分にミーティングスペースが完成している。
柱周りのセルフコーヒーカウンターもほぼ完成している。こうすると、そこに柱があることがあまり気にならない。ロビーでは特に、空間を狭く感じさせないよう、濃い色は使わず、明るい色を多めに使っている。


客室を念入りにチェックする設計者の大塚孝博さん

次に、数日前に工事完了した3階と5階の客室へ上がってみると、設計者の大塚孝博さんを発見。いつもはダンディーなファッションの大塚さんが、今日はラフな服装でデジカメを首から下げている。今日は現場チェックの日なのだ。2フロア分をチェックする予定。
壁面ボードに傷がついていないかなどを念入りにチェックしながら、大塚孝博デザイン事務所のオリジナルシートに、気付いた項目を書き込んでいく。このオリジナルシートは複写式になっており、下の2枚の用紙にも複写され、3枚の同じシートができあがる。大塚事務所、オーナー、施工会社で1枚ずつ持っておくためだ。
「ワンフロアのチェックに1、2時間かかります。だんだんチェックするスピードが速くなってきたので、今日は3階と5階の2フロアを3時間で終わらせる予定です」(大塚さん)
各フロアの客室数は20室弱。なかなかハードワークである。


大塚さんが特に念入りにチェックしている項目は、壁紙に下地の凹凸が出ていないか、ヘッドボードパネルなどに傷はないか、家具や照明器具の寸法や精度はどうか、など。
気になる点をすべてリストアップした後、それがオーナーの許容範囲か、あるいは修正が必要なのかをまとめて協議する。
「僕が気になる点は、オーナーも気になるし、なにより宿泊するお客さんも気になるはずです。だから厳しくチェックします。壁紙の貼り替えなら、オープン後でも、チェックアウトからチェックインまでのアイドルタイムになんとか作業できますから、妥協せず修正します」
「今回は客室で間接照明を使っているので、特に壁の微妙な凹凸が目立ちやすい。上から触ると、その凹凸が直せるのかどうか、だいたい検討がつきます。柔らかければ、接着剤の塊だったりするので、すぐ修正できます」
「とはいえ、施工会社の方々も、今回は壁紙を貼るのが大変だったんじゃないかな。というのは、通常、壁紙の継ぎ目の部分はローラーで押さえるわけですが、今回は素材感を出すために凹凸のあるテクスチャーを持つ和紙クロス(川島織物セルコン)を使っていますから、ローラーが使えない。ローラーで強く押さえると、せっかくの凹凸感がつぶれてしまいます」


客室のイスに背もたれを付けないことで、空間にゆとりを持たせた


客室。ベッドとサイドテーブルの隙間。省スペース化とはいえ、この隙間を確保しておかないと、マットをずらしてシーツを交換することができない


ヘッドボードの間接照明。LED1灯で光らせている。これもコスト管理

先日、大塚さん自身も、一泊してみたそうだ。
「実際に泊まってみたら、客室の雰囲気もイメージどおりに実現されていて、寝具も気持ちいい。『これならOKだろう』と思えたので、客室については一安心です。あとは、1階ロビーですね」
「いま、ちょうど1階でロビーの施工中ですが、施工中はなるべく監督さんに任せて、僕はあまり見ないようにしています。見ると、どうしてもいろいろ口を挟みたくなってしまう」(笑)


客室は、大塚さんの当初の想定どおり、天井の高さを感じられる空間になった。
「天井の高さはまったく変えていないのですが、高さを感じられるのは、壁の一面に濃い色を使ったことで、天井高が『目で追える高さ』になったためです。もし壁と天井の全面が白だったら、人間の目では高さを把握しにくいわけです」


おそらく多くのホテルプロジェクトがそうであろうが、ここでも「省スペース化」と「コスト管理」が大きなテーマ。
客室のイスには背もたれを設けず、イスがデスクの下にすっぽり収まるようになっており、省スペース化を図っている。
また、ヘッドボード上部の間接光に使っている光源はLED1個だけで、アクリル棒を使いライン状に光らせている。これも、コストコントロールの一種だという。

もうすぐ完成だ。

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エントランスの新設した風除室も形が見えてきた


エントランスまわりのタイルを現場で微調整しているところ


関連タグ:「お茶の水イン」改装プロジェクト 


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